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【書評】「統計学入門」(東京大学出版会)

2021年8月16日

どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。

本日は、統計学の「超」定番教科書である「統計学入門(基礎統計学Ⅰ)東京大学出版会」の書評を書きました。

これから本気で統計学を学びたいと考えている方に、おすすめの1冊です。

この記事を読めば、難易度や読み方がわかると思いますので、ぜひ参考にしてみてください!

「統計学入門」の難易度

難易度 ☆☆☆ 統計検定2級〜統計検定準1級レベル
おすすめ度 ☆☆☆☆☆(満点)
読了時間の目安 約30時間
一言コメント 統計学を学んでいる人の大半が持っている"超定番"教科書。
持っておくべき1冊ということで、おすすめ度は満点です。

統計学の”入門書”の中では、最高峰の難易度だと思います。

初学者が読むとしたら、かなりの覚悟が必要です。

私の場合、「統計学入門(東京大学出版会)」を読む前に、統計学の入門書として、下記3冊を通読していました。

統計学の入門書を3冊読んだ後にも関わらず、数式の展開でつまずくところが何回もあり、「難しいな」と感じました。

しかし、多くの人がこの本で勉強しており、たくさんのフィルターを通っても「名著」として残っていることから、素晴らしい教科書であることは間違いありません。

さらに、ネット上には練習問題の解説記事が豊富にあり(後述)、勉強する環境も整っています。

 

また、初心者が独学で統計学の基礎を学ぶには、「急がば回れ」方式で下記3ステップを踏むべきだと考えています。

独学のための3ステップ

STEP1 マンガなどで統計学の全体像や活用方法を学ぶ

STEP2 初学者向けの統計学の教科書を読む

STEP3 伝統的な統計学の教科書を読む ⇒「統計学入門(東京大学出版会)」

「統計学入門(東京大学出版会)」は、上記のSTEP3に該当しており、2冊目または3冊目以降に読むべき本だと思います。

ちなみに、「STEP1やSTEP2では、どんな教科書を読んだら良いのか」について、コチラの記事で解説しています。

統計学本5選
【初心者向け】統計学のおすすめ本5選(特徴も解説!)

続きを見る

 

「統計学入門」の内容

「統計学入門(東京大学出版会)」の目次を下記に示します。

第1章   統計学の基礎(P.1~)
第2章   1次元のデータ(P.18~)
第3章   2次元のデータ(P.41~)
第4章   確率(P.67~)
第5章   確率変数(P.87~)
第6章   確率分布(P.109~)
第7章   多次元の確率分布(P.133~)
第8章   大数の法則と中心極限定理(P.155~)
第9章   標本分布(P.176~)
第10章  正規分布からの標本(P.194~)
第11章  推定(P.214~)
第12章  仮説検定(P.233~)
第13章  回帰分析(P.258~)

統計学の中心とも言える、「推定」「仮説検定」「回帰分析」が後半の約60ページ分しか無いです。

一方で、「確率」「確率分布」には約100ページも割いていることから、「推定」「仮説検定」のための”下準備”に注力しています

つまり、タイトルの通り、統計学”入門”の教科書という立ち位置ということがわかります。

しかし、入門書の割には「数理統計」的な、すなわち「数学」的な難しい内容も解説しており、これが難易度を引き上げています。

よって、「数理統計学」への”つなぎ役”としても活用できると考えています。(私が本書を通読した理由は、正にこれです。)

 

 

他の教科書との内容比較

他の統計学の入門書とカバーしている範囲を比較してみました。

  統計学入門(基礎統計学Ⅰ) Rによるやさしい統計学 基本統計学(第3版) 入門統計解析 心理統計学の基礎
難易度 ☆☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆☆
度数分布
(ヒストグラム)
 
1変数データ
(代表値など)
2変数データ
(相関、共分散など)
確率
確率変数
確率分布

ほぼ無し

ほぼ無し
標本分布
推定
仮説検定
回帰分析
R適用例のみ
分散分析     ○ 
因子分析  
R適用例のみ
   
時系列分析      

上表を見てもわかると思いますが、「統計学入門(東京大学出版会)」は、基礎部分(確率・確率変数・確率分布)に紙面の多くを割いており、実務でよく使われる「分散分析」「因子分析」「時系列分析」の解説がありません。

しかし、「統計学入門(東京大学出版会)」には続編があるため、多くを語る必要が無かったのだと解釈しています。

 

【東京大学出版会 基礎統計学シリーズ続編】

人文・社会科学の統計学(東京大学出版会)

自然科学の統計学(東京大学出版会)

 

特徴(長所・短所)

「統計学入門(東京大学出版会)」の長所と短所をまとめてみました。

短所については、他の教科書で補うしか無いのですが、今のところ下記2冊で補えると考えています。(良い教科書があったら、また紹介します。)

自然科学の統計学(東京大学出版会)

心理統計学の基礎

 

長所

長所

  • 確率・確率変数・確率分布の解説が詳しい!
  • モーメント母関数の解説がわかりやすい。
  • 中心極限定理の解説が詳しくてわかりやすい。
  • 練習問題を詳しく解説してくれるブログが豊富

 

短所

短所

  • 数学力ないと理解できない。
  • 「仮説検定」「回帰分析」の内容が不十分と感じる。(紙面が足りず、内容詰め込んだ印象)
  • 検出力の解説は、図解が必要だと思う。←これも詰め込んだがために詳しく解説できていない。
  • 練習問題が難しい。

 

解説記事の紹介

練習問題の解答

練習問題を解く際に、非常に参考にさせてもらったブログを紹介します。

こんてんつこうかい

練習問題の解答が全部載っています。

読むだけでも勉強になるので、ぜひ参考にしてみて下さい。

 

あつまれ統計の森

練習問題の解答が一部載っています。

 

137

1章を除き、練習問題の解答が載っています。

Pythonで解いたコードも載っているので、Pythonも勉強している人は特に参考になるかもしれません。

 

数学の参考

高校数学の美しい物語

このサイトで検索すれば、数学的な疑問はほとんど全部解決します。

キーワードは下記を参考にしてみて下さい。

  • 二項定理
  • 無限等比級数の和
  • e^xのマクローリン展開
  • 積、商の微分
  • ヤコビアン
  • ガウス積分

 

まとめ

「統計学入門(東京大学出版会)」は、「超」がつくほどの定番教科書です。

本気で統計学を学ぶつもりであるなら、持つべき教科書の一つです。

ただし、本当の初心者は2冊目、3冊目以降に挑戦しましょう!

統計検定2級レベルでは不要です。

統計検定準1級以上を狙う際に、ぜひ読んでみて下さい!!

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こーし

■ケミカルエンジニア
■化学メーカー勤務
■現場配属の生産技術
■化学工学技士、統計検定1級など
■化学工学 × データサイエンス
pythonと数理統計学を勉強中!

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