自分はケミカルエンジニアに向いてるのかな?
こんなお悩みを解決します。
どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。
化学工学入門講座第3回目は、「ケミカルエンジニアに必要なスキルとは?」についてです。
わかりやすく解説しますので、気軽に読んでいってください!
この記事を書いた人
こーし(@mimikousi)
化学工学講座第1回「化学工学とは?」はコチラ
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化学工学入門①〜化学工学とは?【現役ケミカルエンジニアが解説】
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化学工学講座第2回「化学工学のお仕事」はコチラ
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化学工学入門②〜化学工学系のお仕事【就職に強いは本当?】
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目次
ケミカルエンジニアに必要なスキルとは
先日、こんなツイートをしました。
研究やっていれば優秀なのに、
技術に来たら、オペレーターから能無し呼ばわりされる
そんな人がたまにいる
• フットワークの軽さ
• 100%を求めない
• コミュニケーション能力
• 強引さ(タフさ)
原理原則の理解が多少劣っても、これらの能力が高い人は技術が向いている適性を考えよう
— こーし⚡️ケミカルエンジニア (@mimikousi) October 4, 2020
研究職と技術職(生産技術、技術開発)では、仕事の進め方が異なり、適正も異なります。
よって、ケミカルエンジニア(技術職)には、下記のスキル(心がけ)が必要です。
技術職に求められるスキル
- コミュニケーション能力
- フットワークの軽さ
- 100%を求めない
- 強引さ(タフさ)
- リーダーシップ
ちなみに、会社によって定義は異なりますが、「生産技術」と「技術開発」の違いは下記の通りです。
生産技術・・・製造現場の技術担当(主に増産やコストダウンを担当)
技術開発・・・新製品のプロセス設計
コミュニケーション能力
まず最初に、コミュニケーション能力です。
どんな仕事でもコミュニケーション能力は必要になりますが、化学メーカーのケミカルエンジニア(技術職)に求められるコミュニケーション能力は下記の通りです。
求められるコミュニケーション能力
- 現場(運転員)、先輩・上司の意見をきちんと”聞く力”
- テストや改造の内容について説明し、納得してもらう”説明する力”
- 周りの人を巻き込む”依頼する力”
- 頭の良いふりをしない"下座する力"
上記を見てもらえばわかりますが、必要なコミュニケーション能力は、飲み会とかでワイワイ楽しくやるような能力ではなく、「論理(ロジック)」です。
たとえ口べたでも、人の話をよく聞き、論理的に話すことができれば仕事上は特に問題ありません。
また、周りを巻き込むのには抵抗があるかもしれませんが、「仕事上必要なのだ」と考えれば、自然とできるようになると思います。
(プライベートでは引きこもりでも、仕事になるとバリバリ周りを動かしちゃう人もいます!)
周りを巻き込む際に注意しなくてはいけないのが、「仕事ができる(頭が良い)ふりをしない」ということです。
態度はいつでも低姿勢にすべきです。頭の良い悪いは、結果で示せば良いのです。
ケミカルエンジニアの立ち位置
ケミカルエンジニアの立ち位置をサッカーのポジションに例えて図解してみました。
ケミカルエンジニアは、「トップ下」くらいの立ち位置になります。(サッカー知らない方、すみません。。)
運動量も多いですし、関わる人も多いです。
つまり、様々な部署と連携しながらテンポ良く仕事を進めていくため、「コミュニケーション能力」が必須となります。
下記のツイートでも多くの方に賛同いただきました。
【ケミカルエンジニアの立ち位置】
化学メーカーにおけるケミカルエンジニアの立ち位置を図示してみました。
サッカーで言うと「トップ下」くらいのポジションかな?
社内で関わる人の多さは半端ないです。
ボールをさばきまくります。依頼される仕事もありますが、自ら攻める仕事の方が多い印象 pic.twitter.com/2Y1biVrpWS
— こーし⚡️ケミカルエンジニア (@mimikousi) July 11, 2020
フットワークの軽さ
コミュニケーション能力にも通じるところはあるのですが、「フットワークの軽さ」も大事です。
じっくり考えながら、マイペースに進めるという仕事ではないです。(残念ながら)
特に、生産技術(生産現場の技術担当)では、フットワークの軽さが重要です。
製造現場では、常に設備が稼働し、生産し続けているため、接する課題が緊急性の高いものばかりです。
例えば、トラブル対応や運転に関する困りごとについては、今すぐ解決することを要求されます。
一度生産を止めてしまうと、復旧するのに大変な作業とコストが伴うため、常にタイムリミットがあります。
よって、自分の仕事を後回しにして、すぐに現場に駆けつけ、対応するフットワークの軽さが必要です。
また、仕事や相手への熱意を端的に示す方法は、「スピード」です。
依頼した仕事が、きちんとした形で即日返ってきたら誰でも嬉しいですよね。
依頼した相手は、「次もあなたにお願いしたい」と思うはずです。
こうやって、製造現場の信頼を勝ち取るのです。
そして、8割の出来でも良いから、スピードを意識して仕事しましょう。
8割程度の理解だったとしても、思い切って実行に移すと、理解が深まったりします。
100%を求めない
フットワークの軽さとも少し関係してきますが、「100%を求めない」という姿勢が大事です。
技術職(特に生産技術)が直面する多くの課題には、必ず制約があり、100%正しい答えにたどり着くことは困難です。
制約の中で、最も良いと思われる解決策(落とし所)を見つけて、前に進むしかありません。
完璧な正解を求めるのではなく、現時点で最良な選択肢を選ぶという姿勢が必要になります。
例えば、生産トラブルで計測機器が故障したとしましょう。
計測機器を直して復旧するのが正解です。
しかし、部品の在庫が無く、直すのに時間がかかるといった場合がほとんどです。
そんな場合は、計測機器なしで運転する方法を考えます。
もちろんリスクが高ければやめますが、リスクが低くても「100%安全」を保証できることはなく、ある程度のリスクを負って運転するしかないです。
よって、「100%を求めない」という姿勢が重要になります。
強引さ(タフさ)
どんな仕事にも共通するかもしれませんが、”ある程度の”「強引さ(タフさ)」は必要です。
当たりまえですが、仕事を進めるのは「自分」です。
意思決定(やる・やらない)をするのは、上司や製造課の偉い人ですが、選択肢を提供するのは「自分」です。
そして、「自分はどうしたいのか(やる・やらない)」を明確にしてから、上司の判断を仰ぐのが基本です。
これをポジションを取るといいます。
そのテーマについて、自分が一番考えているはずです。
なので、自信をもってポジションを取りましょう。
意思決定者の視点に立って考えると、何も言わずに承認するというのは心理的に難しいです。
つまり、「何かを言わなければならない」だけであって、その発言に対して、自分のポジションを変えるほど深刻に受け止める必要はありません。
ただ、正論を返された場合は別です。自分が間違っていれば、すぐに修正しましょう。
リーダーシップ
ケミカルエンジニアは、製品の特徴(ケミストリー)を理解しつつ、製造プロセスにも詳しいため、量産化プロジェクトではリーダー役を担います。
プロセスの基本設計が終わったら、機械や計測機器、制御の細かい設計を機械・計測のエンジニアに依頼します。
ネットワーク関係はシステムエンジニアに依頼し、事業構想は営業と協力しながら進めていきます。
その他にも様々な部署と連携しながらプロジェクトを進捗させていきます。
しかし、スムーズに進捗するプロジェクトは存在せず、何かしらの問題に直面します。
限られた時間のなかで、多くの関係者と協力しながら、プロジェクトを進めていくには、リーダーシップが必要です。
強引さにも関係してきますが、「何をどうしたいのか」という明確なビジョンをもって周りを巻き込んでいくことが大切です。
必要となる学問
数学
正直、大学で習ったような「微分積分」や「線形代数」、「ベクトル解析」、「複素関数」、「ラプラス変換」などの高度な数学は必要ありません。
タンクに入っている液量を算出するために、三角関数を使うことはありましたが、高校数学レベルです。
ちなみに、制御(モデル予測制御、システム同定)やデータ解析(統計、機械学習)に手を出す場合は、必要となる数学レベルが一気に増す感じです。
化学工学
当然ですが、ケミカルエンジニアであれば、「化学工学」の知識は必須です。
最低限「化学工学技士基礎」に合格できるレベルの知識はもっておいてください。
物理化学
化学工学の理論の基礎となっているのは、物理化学ですね。
物理化学が苦手な人は、一通り学習しておくことをオススメします。
数式がほとんどないアトキンスの物理化学の基礎で勉強するのがオススメです。
がっつり勉強したい方は、同じくアトキンスの物理化学<上>、物理化学<下>がオススメです。
分析化学
実はめちゃくちゃよく使います。組成を分析しないと何も始まりません。
生産技術では、現状把握のための分析をしますし、技術開発でもベンチプラントやパイロットプラントの排液サンプル、製品サンプルを分析します。
取り扱う製品や排液に含まれている成分を正しく同定し、定量的に把握するということは、ケミカルエンジニアの基本です。
私は分析化学が大の苦手なので、分析が得意な人にすぐに頼ります。。。
有機化学
収率改善や品質改善などがテーマアップされる可能性は高く、有機化学の知識を使って、不純物や中間体がどのような反応経路を経て生成されるのかを把握する必要があります。
私は有機化学も大の苦手なので、基本だけ勉強したら、あとは詳しい人に頼ります。。。
無機化学
正直よくわかっていません。
無機化学に該当する課題が出てきたら、速攻で無機化学の得意な方を探します。
どの学問で勝負するか
会社にはいろんな専門家が集まっており、全部の学問に精通している必要はありません。
周りの人の力を借りながら、仕事を進めていけば良いのです。
誰がどんな分野に詳しいのか、自分だけの「スキルマップ」を作成していきましょう。
大事なのは、自分はどこの分野で勝負するのかということです。
最初から決めておく必要はありませんが、入社して10年経っても勝負できる領域がないというのは、かなり危険な状態だと思います。