教科書毎の特徴も教えて欲しいなー
こんなお悩みを解決します。
どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。
化学工学入門講座第4回目は、「化学工学のおすすめ教科書【基礎&実務】」についてです。
基礎を固める教科書から、実務で使える教科書まで、特徴をふまえておすすめをお伝えしますので、気軽に読んでいってください!
この記事を書いた人
こーし(@mimikousi)
目次
化学工学のおすすめ教科書5選【基礎編】
基礎を固めるための化学工学のおすすめ教科書は下記5冊です。
化学工学のおすすめ教科書5選
①はじめて学ぶ化学工学 丸善出版 P224 難易度☆
②はじめての化学工学 プロセスから学ぶ基礎 丸善出版 P256難易度☆☆
③ベーシック化学工学(増補版) 化学同人 P216難易度☆☆
④化学工学ー解説と演習ー(改訂第3版)朝倉書店 P355難易度☆☆☆
⑤現代化学工学 産業図書 P386難易度☆☆☆☆
実は他にも、下記4冊も持っており、その中から5冊を厳選しました。
・化学プロセス工学(友人にもらった)→初級者向け
・改訂新版化学工学通論Ⅰ(会社でもらった)→初級〜中級者向け
・通論化学工学(会社の先輩にもらった)→中級者向け
・基礎化学工学(中古で買った)→中級者向け(プロセス制御の解説はこの本が一番好きです)
入門者向け
① はじめて学ぶ化学工学 丸善出版 P224 難易度☆
化学工学を専門としていない方向けに書かれた最も易しい化学工学の教科書です。
数学や物理化学の基礎から解説してくれている珍しい教科書です。
例題を解きながら読み進めていく形式であり、マセマのキャンパスゼミシリーズに似ています。
網羅している範囲も広く(浅く広く)、非常に取り組みやすい教科書なので、初学者(独学)におすすめです。
ただし、深い内容は書いていないので、これ1冊では不十分だと思います。
初級者向け
② はじめての化学工学 プロセスから学ぶ基礎 丸善出版 P256 難易度☆☆
後述する④化学工学ー解説と演習ー(改訂第3版)の平易なバージョンという位置づけです。(個人的に)
特に、第7章のプロセス設計では、プロセスの設計手順が解説されており、他書には見られない内容なので、一読の価値ありです。
「リサイクルを有するプロセスの設計」について記載がある教科書は、この本しか知りません。
ただ、網羅している範囲がやや狭いのが欠点です。(教科書のカバー範囲は、後に表でまとめてます)
③ ベーシック化学工学(増補版) 化学同人 P216 難易度☆☆
名著「反応工学」を書いた橋本先生の教科書です。
B5判の大型本なので、とにかく読みやすいです。
ただ、②はじめての化学工学と同様、網羅している範囲がやや狭いのが欠点です。(教科書のカバー範囲は、後に表でまとめてます)
ちなみに最近、増補版が出ました!
章末問題の解答に解き方を加え、「one point」という補足を増強したようです。
P208→P216と8ページ増えてます。
中級者向け
④ 化学工学ー解説と演習ー(改訂第3版)朝倉書店 P355 難易度☆☆☆
⑤現代化学工学と2トップを張る教科書です!
演習問題がたくさんありますが、詳しい解説は無いので独学にはやや難しいです。
本文は、実用的な内容ですので、個人的には愛用(実務で参照)しています。
ポンプ、熱交換器の設計(NTU法)、撹拌など、他の教科書には見られない実用的な内容が解説されているので、一番オススメです。
実際、私自身も仕事でいつも携帯していたので、表紙がボロボロになってしまいました。
⑤ 現代化学工学 産業図書 P386 難易度☆☆☆☆
④化学工学ー解説と演習ー(改訂第3版)と2トップを張る教科書です!
さすが京都大学教授陣という感じで信頼できますが、やや難易度高めです。
あと、ハードカバーですので、少し重たいですが、持ち運びでボロボロになることがないので安心ですね。
実務でよく使う「撹拌」の解説が無いのが欠点でしょうか。
「反応操作」の章のボリュームがダントツに多いのが特徴です。
教科書のカバー範囲表
①はじめて学ぶ化学工学 | ②はじめての化学工学 | ③ベーシック化学工学 | ④化学工学 解説と演習 | ⑤現代化学工学 | |
【基礎】 物理化学 単位系 相変化 収支計算 |
ー ◎ ○ ○ ○ |
ー × × ○ ○ |
ー × ○ × ○ |
ー × ○ × ○ |
ー × ○ ○ ○ |
流動 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
伝熱 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ガス吸収 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
蒸留 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
抽出 | △ | × | ○ | ○ | ○ |
吸着 | △ | × | × | ○ | ○ |
膜分離 | △ | ○ | × | ○ | ○ |
晶析 | △ | × | × | ○ | ○ |
乾燥・調湿 | △ | × | ○ | ○ | ○ |
粉粒体 | △ | × | ○ | ○ | ○ |
反応工学 | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
プロセス制御 | × | ○ | × | ○ | ○ |
燃焼 | △ | × | × | ○ | ○ |
撹拌 | × | × | × | ◎ | × |
プロセス設計 | × | ◎ | × | × | × |
化学工学ー解説と演習ー v.s 現代化学工学
ここで、中級者向け2トップのどちらを選ぶべきか。という問題があります。
どちらか非常に悩みますが、個人的には④化学工学ー解説と演習ー(改訂第3版)がオススメです。
ただ、大学ですでに⑤現代化学工学を購入していたら、新たに買う必要はないと思います。
そこまで決定的な差はないです。
2冊とも持っておらず、どちらか欲しいという方におすすめするのは、④化学工学ー解説と演習ー(改訂第3版)です。
Amazonのレビューでは評判良くないですが、初学者向けを期待したレビューなので気にしなくて良いと思います。
「化学工学ー解説と演習ー」と「現代化学工学」を単元別に優劣を比較した表を作成してみました。
・"○"は優れている
・"◎"は特に優れている
・"-"は優れているとは言えない
④化学工学 解説と演習 | ⑤現代化学工学 | |
【基礎】 物理化学 単位系 相変化 収支計算 |
- - - - - |
- - - - ○ |
流動 | ○ | - |
伝熱 | ○ | - |
ガス吸収 | - | - |
蒸留 | - | - |
抽出 | - | - |
吸着 | - | - |
膜分離 | - | - |
晶析 | - | - |
乾燥・調湿 | - | ○ |
粉粒体 | ○ | ー |
反応工学 | - | ◎ |
プロセス制御 | - | ○ |
燃焼 | - | - |
撹拌 | ◎ | - |
【化学工学ー解説と演習ーの強み】
①メーカー技術者も執筆
メーカー技術者も執筆に加わっており、より実務的な内容となっています(流動・伝熱・粉粒体)
②撹拌の解説がある
撹拌を解説している教科書は意外に少ないですが、スケールアップの時によく問題となるので重要だと思います。
【現代化学工学の強み】
①反応工学(操作)が詳しい
60ページ以上の紙面を割いており、解説がかなり充実しています。
ちなみに、名著「反応工学」を書いた橋本先生が担当しています。
②プロセス制御が詳しい
PID制御を中心に解説しています。
実務でよく使うのはPID制御なので、この点は良いと思います。
よって、実務で使いたい&撹拌を勉強したい方は、④化学工学ー解説と演習ー(改訂第3版)を選び、反応工学&プロセス制御を中心に勉強したい方は、⑤現代化学工学を選べば良いかなと思います。
実務で使える教科書10選
上記の教科書では、基礎を固めるには十分ですが、実際に設計するとなるとやや内容が不足しています。
そこで、実際に実務で使える(使っている)教科書を10冊紹介したいと思います。
今後も良い本があれば、追加していきたいと思います。
化学工学全般
改訂七版は、改訂六版のPDFと例題のExcelファイルがついてきますので、激アツです!
PDF版なら、調べたい用語を検索できるので、調べるのがかなり楽になりました。
amazonや楽天では入荷していないみたいなので、欲しい方は化学工学会のHPから購入してください。
プロセスシミュレーターを使って設計するのが一番速いのですが、やはり最初はExcelで計算しておくと感覚がつかめると思います。
Excelで計算シートを作る際は、この本を参考にすると良いです。
熱交換器
この本は、とんでもない良書です。
一生かけてもこんなすごい本を書ける気がしません。
過去に、サーモサイホンリボイラや横型のシェル&チューブ加熱器を設計した際に、こちらの本を参考にしました。
例題をマネしながら設計したところ、無事設計通り能力が出ました。この本に感謝です。
amazonや楽天では、在庫が無いようなので、欲しい方は工学図書出版のHPで購入して下さい。
熱交換器の設計では、レイノルズ数やヌッセルト数、プラントル数などの無次元数を理解することが重要です。
意味を詳しく知りたい方は、この本を読むと良いと思います。
制御工学
PID制御の基礎がコンパクトにまとまっており、よく読み返しています。
実務で使えるレベルの知識が身につきます。
ただ、伝達関数や安定性の解説が不十分ですので、はじめての制御工学などで別途勉強しておくと良いです。
試験対策は、はじめての制御工学が役に立つと思います。
めちゃくちゃ実務者向けの教科書です。
バルブの流量特性や伝送器、スプリットレンジ制御など、実務で使う内容を学ぶことができます。
そして何より、例題がケミカルプラントを題材にしているので、化学工学のいろんな知識が必要となり、総合力がアップします。
制御工学のおすすめ参考書については、下記の記事で詳しく解説しています。
-
【無料あり】制御工学のおすすめ参考書(プロセス制御向け)
続きを見る
蒸留
大江先生が書いた名著です。
基礎から応用まで幅広く学ぶことができます。
蒸留は、この1冊を読んでおけば、間違いないです。
続編(演習編)も出ました!
こちらも大江先生が書いた名著です。
絵ときシリーズの後に出版されており、さらに内容が深くなっています。
若干難易度が上がっているので、絵とき「蒸留技術」基礎のきその後に読むのがおすすめです。
ろ過
濾過実験の方法や濾過データの解析方法が学べます。
濾過データの解析方法は、他の教科書では見つけられませんでした。
絵ときシリーズは、初心者向けのような体裁をしていますが、実際はかなり実用的な内容まで解説されています。
この本から、絵ときシリーズにハマってしまいました。
反応工学
⑩反応工学
反応工学と言えば間違いなく、この本ですね。
古い本なのに、字体も古くさくなく、レイアウトも読みやすいです。(改訂増補版)
演習の解答も詳しめです。
2019年に改訂増補版が出ています。今でもよく売れているということでしょうか。
化学工学のおすすめ教科書【洋書編】
化学工学の教科書は、洋書の方が充実しています。(多くの学問がそうだと思います)
Chemical Process Control : An Introduction to Theory and Practice
いずれ、洋書のオススメ教科書も紹介したいと思っています。
実は、コチラのサイトで化学工学の教科書(洋書)が無料で読めてしまいます。
【無料で読めるタイトル】
などの名著が無料で見れますので、英語が苦でない方はこちらで勉強するのもありかなと思います。
【おまけ】化学工学会個人会員限定
年会費11,000円(月あたり約917円)で「化学工学会」の個人会員になることができます。
月1回発行される化学工学会誌が届くほか、化学工学の教科書を会員限定価格で安く購入することができます。
あと、電子図書館というものがあり、「化学工学便覧」や絶版になった教科書のPDFを見ることができます。
ダウンロードもできますので、気になったら覗いてみて下さい。
まだまだ現役のケミカルエンジニアなので、これから仕事していく上で参考になった教科書があれば、追加で紹介していきます!