化学プロセス向けの参考書も知りたいな。
こんなお悩みを解決します。
どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。
本日は、「制御工学のおすすめ参考書」について紹介します。
制御工学の参考書はたくさんありますが、その中でも化学プラントなどの「プロセス産業」に勤める技術者におすすめの参考書を紹介していきたいと思います!
私自身、学生時代に「制御工学」を少しだけ学びましたが、難しくて全然理解していませんでした。
しかし、仕事で制御工学が必要となったため、ゼロから勉強を始めました。
制御工学について苦手意識のある方も参考にしていただけたらと思います。
本記事の内容
- 制御工学のおすすめ参考書
- 古典制御
- PID制御
- プロセス制御
- 現代制御
- モデル予測制御
- Pythonによる制御工学入門
この記事を書いた人
こーし(@mimikousi)
制御工学のおすすめ参考書
上図に、制御理論の発展についてまとめました。
今後、どのような勉強をすべきか、目安になると思います。
オススメの学習ルートは下記の通りです。
まず、古典制御の基礎を学び、次に実務で最もよく使われているPID制御を学びましょう。
この段階で実務で通用する力が8割方つきます。
その後、現代制御理論を学んでから、モデル予測制御に進みましょう。
本記事では、下記の制御理論について、おすすめ参考書を紹介します。
制御理論
- 古典制御
- PID制御
- プロセス制御
- 現代制御
- モデル予測制御
ちなみに、プロセス制御とは、石油・化学・鉄鋼・製紙・ガス・セメント・食品などの製造プロセスにおける制御のことです。
「プロセス制御とは何か」については、下記に詳しくまとめています。
-
プロセス制御とは?【現役エンジニアが解説】
続きを見る
これまで色々と教科書を読んできましたが、下記の流れで学習を進めると良いと思います。
(ロバスト制御はまだ勉強できていません。)
以下、参考書の内容について詳しく解説していきます。
古典制御
まず、最初におすすめするのは、はじめての制御工学 改訂第2版です!
これは間違いなくオススメです。非常にわかりやすいです。
ポイント
- むだ時間の解説を省いている
- 現場で最も使われるPID制御の説明が少ない
- ボード線図の説明がわかりやすい◎
- ナイキストの安定判別法の説明が丁寧○
YouTubeで有益な大学講義(慶應義塾:足立修一先生)を見つけました。
他のYouTube講義と比べてダントツに理解しやすいです。
はじめての制御工学 改訂第2版を読んだあとに、足立先生の講義を聴いたら理解が深まると思います。
無料で聴講でき、かつ繰り返し聴けますので、ぜひチェックしてみてください。(全12回)
制御工学講義(足立先生)
ちなみに、上記の講義は、MATLABによる制御工学を教科書に使用しています。
PID制御(プロセス制御向け)
古典制御の基礎を学んだら、次はPID制御を学びましょう。
プロセス制御向けの良書を見つけましたので、紹介します。
それは、PID制御の基礎と応用です!
ポイント
- コンパクトで簡潔
- 実務向け(PIDチューニングまでカバー)
- プロセス制御の制御系(流量、液面、圧力、温度、組成)を解説
- 時間領域なのか、周波数領域なのか記号から判断しにくいところがある
- PID制御の発展系(2自由度PID制御など)の記載は少なめ
さらに詳しく勉強したい方は、
を参考にしてみてください。
2自由度PID制御、PIDパラメータの自動調整法についても詳しく書かれています。
ただし、古典制御の基礎については、記述がないので1冊目に読むのはオススメしません!
プロセス制御
ここで、プロセス制御向けの参考書を紹介します。
制御理論というよりも、現場ではどのような制御手法が使われているのかを把握するイメージです。
上記2冊は、化学工学の先生が書いた教科書ですので、化学プロセスにおける制御について学ぶことができます。
新版 プロセス制御工学は、理論全体を網羅し、広く浅く解説していますので、今後の勉強の指針を立てる際に有用でした。
ポイント
- 網羅性は非常に高い○
- 伝達関数・ラプラス変換の説明が詳しい○
- 内容は広く浅いので、それぞれ別途参考書が必要
一方、プロセス制御システムは、化学プロセスにおける物理モデルの導出や、制御に使用されるハードウェア(伝送器やバルブなど)について力を入れて解説しており、少しマニアックと言えます。
しかし、現場では非常に大切な内容なので、現場に配属されたらぜひ一読をオススメします!!
ポイント
- 実務向けの良書
- 物理モデルの導出が詳しい
- 化学プロセスを例に、積分系、一次遅れ系など説明してくれる
- プロセスを例にしているため、変数が多く、やや理解しにくい
⇒制御理論の基礎は別の教科書で学ぶべき - 制御系のハードウェアの解説もあるレアな書籍
また、洋書も参考にしています。
参考文献として、よく引用されている2冊を紹介します。
ものすごいボリュームなので、日本語の書籍では書いてないような細かいことも書いてあります。
日本語の教科書で一通り学んでから挑戦すると良いと思います。
私は、日本語の教科書で理解できないときに参照するようにしています。
Chemical Process Control:An Introduction to Theory and Practice
下記のMITのテキストは、1017ページもあり超大作です。
いつかは読破したいなと思っています。(日本の学生は勉強足りてない?)
Process Control: Designing Processes and Control Systems for Dynamic Performance
現代制御
続いて、現代制御理論です。
次に紹介する「モデル予測制御」を勉強するための基礎固めの位置づけです。
古典制御と同じく、講談社のはじめてシリーズをオススメします!
実は、著者の佐藤先生がYouTubeで解説動画をあげてくれています。
教科書と動画で学習できるのは、非常にありがたいですね。
はじめての現代制御理論
- 講義動画00
- 講義動画01(その1) 現代制御とは 〜状態空間表現の基礎〜
- 講義動画01(その2) 現代制御とは 〜状態空間表現の基礎〜
- 講義動画02 状態空間表現
- 講義動画03(その1) 行列とベクトルの基本事項
- 講義動画03(その2) 行列とベクトルの基本事項
- 講義動画04 状態空間表現と伝達関数表現の関係
- 講義動画05 状態変数線図と状態変数変換
- 講義動画06 状態方程式の自由応答
- 講義動画07 システムの応答 〜状態方程式の解〜
- 講義動画08(その1)システムの応答と安定性
- 講義動画08(その2)システムの応答と安定性
- 講義動画09(その1)状態フィードバックと極配置
- 講義動画09(その2)状態フィードバックと極配置
- 講義動画10(その1)システムの可制御性と可観測性
- 講義動画10(その2)システムの可制御性と可観測性
- 講義動画11(その1)オブザーバの設計
- 講義動画11(その2)オブザーバの設計
- 講義動画12 状態フィードバック制御とオブザーバの併合システムの設計
- 講義動画13(その1) サーボ系の設計
- 講義動画13(その2) サーボ系の設計
- 講義動画14(その1) 最適制御
- 講義動画14(その2) 最適制御
また、現代制御理論を学ぶには、「線形代数」の知識が必要です。
意味がわかる 線形代数が、易しすぎず、難しすぎず、バランスの良い教科書です。
計算方法よりも、線形代数の意味を理解することに特化しています。
さらに深く理解するには、
のどちらか1冊で復習しておくと良いと思います。
基礎の基礎部分は、YouTube見て無料で学ぶのもありですね。
基礎的な部分は、YouTubeを流し見るだけで理解できると思います。
非常にわかりやすくて良いと思います。
モデル予測制御
モデル予測制御のテキストは、ほとんどないのがツラいところです。
現在、手頃な価格で入手できる教科書は、モデル予測制御 制約のもとでの最適制御くらいですね。
また、モデル予測制御を勉強する上で参考にしたのは、下記の論文です。
モデル予測制御
京都大学加納先生の資料もコンパクトにまとまっていて良かったです。
モデル予測制御について、教科書も論文も色々と読んできましたが、計算自体は簡単なのにどれもイメージしにくいので、モデル予測制御の理論について自分で解説記事を書きたいなと考えています!
Pythonによる制御工学入門
制御工学は、MATLABを使うことが多いです。
しかし、最近はPythonユーザーも増えており、今後も普及し続けると考えています。
そこで、Pythonを使いながら制御工学を学べる教科書も紹介しておきます。
それは、Pythonによる制御工学入門です!
何より、サポートページ(YouTube講義)が充実しており、おすすめの1冊です。
YouTube講座を下記にまとめておきました。
Pythonによる制御工学入門
参考記事
京都大学の加納先生が運営しているサイトです。
よく参考にさせてもらっていました。(内容が少し古いのが残念です)