どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。
本日は、統計学の「超」定番教科書である「統計学入門(基礎統計学Ⅰ)東京大学出版会」の書評を書きました。
これから本気で統計学を学びたいと考えている方に、おすすめの1冊です。
この記事を読めば、難易度や読み方がわかると思いますので、ぜひ参考にしてみてください!
「統計学入門」の難易度
難易度 | ☆☆☆ 統計検定2級〜統計検定準1級レベル |
おすすめ度 | ☆☆☆☆☆(満点) |
読了時間の目安 | 約30時間 |
一言コメント | 統計学を学んでいる人の大半が持っている"超定番"教科書。 持っておくべき1冊ということで、おすすめ度は満点です。 |
統計学の”入門書”の中では、最高峰の難易度だと思います。
初学者が読むとしたら、かなりの覚悟が必要です。
私の場合、「統計学入門(東京大学出版会)」を読む前に、統計学の入門書として、下記3冊を通読していました。
- 「Rによるやさしい統計学」 難易度☆
- 「基本統計学(第3版)」 難易度☆☆
- 「心理統計学の基礎」 難易度☆☆☆
統計学の入門書を3冊読んだ後にも関わらず、数式の展開でつまずくところが何回もあり、「難しいな」と感じました。
しかし、多くの人がこの本で勉強しており、たくさんのフィルターを通っても「名著」として残っていることから、素晴らしい教科書であることは間違いありません。
さらに、ネット上には練習問題の解説記事が豊富にあり(後述)、勉強する環境も整っています。
また、初心者が独学で統計学の基礎を学ぶには、「急がば回れ」方式で下記3ステップを踏むべきだと考えています。
独学のための3ステップ
「統計学入門(東京大学出版会)」は、上記のSTEP3に該当しており、2冊目または3冊目以降に読むべき本だと思います。
ちなみに、「STEP1やSTEP2では、どんな教科書を読んだら良いのか」について、コチラの記事で解説しています。
-
【初心者向け】統計学のおすすめ本5選(特徴も解説!)
続きを見る
「統計学入門」の内容
「統計学入門(東京大学出版会)」の目次を下記に示します。
第1章 統計学の基礎(P.1~)
第2章 1次元のデータ(P.18~)
第3章 2次元のデータ(P.41~)
第4章 確率(P.67~)
第5章 確率変数(P.87~)
第6章 確率分布(P.109~)
第7章 多次元の確率分布(P.133~)
第8章 大数の法則と中心極限定理(P.155~)
第9章 標本分布(P.176~)
第10章 正規分布からの標本(P.194~)
第11章 推定(P.214~)
第12章 仮説検定(P.233~)
第13章 回帰分析(P.258~)
統計学の中心とも言える、「推定」「仮説検定」「回帰分析」が後半の約60ページ分しか無いです。
一方で、「確率」「確率分布」には約100ページも割いていることから、「推定」「仮説検定」のための”下準備”に注力しています。
つまり、タイトルの通り、統計学”入門”の教科書という立ち位置ということがわかります。
しかし、入門書の割には「数理統計」的な、すなわち「数学」的な難しい内容も解説しており、これが難易度を引き上げています。
よって、「数理統計学」への”つなぎ役”としても活用できると考えています。(私が本書を通読した理由は、正にこれです。)
統計学入門(赤本)を10章まで読了。
統計学というより、数学の復習してるような感じ。
•二項定理
•無限等比級数の和
•e^xのマクローリン展開
•積、商の微分
•ヤコビアン
•ガウス積分
など— こーし⚡️ケミカルエンジニア (@mimikousi) August 10, 2021
他の教科書との内容比較
他の統計学の入門書とカバーしている範囲を比較してみました。
統計学入門(基礎統計学Ⅰ) | Rによるやさしい統計学 | 基本統計学(第3版) | 入門統計解析 | 心理統計学の基礎 | |
難易度 | ☆☆☆ | ☆ | ☆☆ | ☆☆ | ☆☆☆ |
度数分布 (ヒストグラム) |
○ | ○ | ○ | ○ | |
1変数データ (代表値など) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
2変数データ (相関、共分散など) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
確率 確率変数 確率分布 |
◎ | △ ほぼ無し |
○ | ○ | △ ほぼ無し |
標本分布 推定 仮説検定 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
回帰分析 | ○ | △ R適用例のみ |
○ | ○ | ◎ |
分散分析 | ○ | ○ | ○ | ||
因子分析 | △ R適用例のみ |
○ | |||
時系列分析 | ○ |
上表を見てもわかると思いますが、「統計学入門(東京大学出版会)」は、基礎部分(確率・確率変数・確率分布)に紙面の多くを割いており、実務でよく使われる「分散分析」「因子分析」「時系列分析」の解説がありません。
しかし、「統計学入門(東京大学出版会)」には続編があるため、多くを語る必要が無かったのだと解釈しています。
【東京大学出版会 基礎統計学シリーズ続編】
特徴(長所・短所)
「統計学入門(東京大学出版会)」の長所と短所をまとめてみました。
短所については、他の教科書で補うしか無いのですが、今のところ下記2冊で補えると考えています。(良い教科書があったら、また紹介します。)
長所
- 確率・確率変数・確率分布の解説が詳しい!
- モーメント母関数の解説がわかりやすい。
- 中心極限定理の解説が詳しくてわかりやすい。
- 練習問題を詳しく解説してくれるブログが豊富
短所
- 数学力ないと理解できない。
- 「仮説検定」「回帰分析」の内容が不十分と感じる。(紙面が足りず、内容詰め込んだ印象)
- 検出力の解説は、図解が必要だと思う。←これも詰め込んだがために詳しく解説できていない。
- 練習問題が難しい。
解説記事の紹介
練習問題の解答
練習問題を解く際に、非常に参考にさせてもらったブログを紹介します。
練習問題の解答が全部載っています。
読むだけでも勉強になるので、ぜひ参考にしてみて下さい。
練習問題の解答が一部載っています。
③137
1章を除き、練習問題の解答が載っています。
Pythonで解いたコードも載っているので、Pythonも勉強している人は特に参考になるかもしれません。
数学の参考
このサイトで検索すれば、数学的な疑問はほとんど全部解決します。
キーワードは下記を参考にしてみて下さい。
- 二項定理
- 無限等比級数の和
- e^xのマクローリン展開
- 積、商の微分
- ヤコビアン
- ガウス積分
まとめ
「統計学入門(東京大学出版会)」は、「超」がつくほどの定番教科書です。
本気で統計学を学ぶつもりであるなら、持つべき教科書の一つです。
ただし、本当の初心者は2冊目、3冊目以降に挑戦しましょう!
統計検定2級レベルでは不要です。
統計検定準1級以上を狙う際に、ぜひ読んでみて下さい!!