定格点以外でも運転できるのでしょうか。
この記事を読んで、しっかり勉強しよう!
どうも、こんにちは。ケミカルエンジニアのこーしです。
本日は、ポンプの性能曲線の見方についてわかりやすく解説していきたいと思います。
この記事を読むことで、性能曲線から吐出し量、全揚程、、NPSHr(NPSH3)、軸動力(電力)を読み取るだけでなく、ポンプを最大限使いこなせるようになります。
本記事の内容
・性能曲線の見方
・抵抗曲線とは
・流量調整時の性能曲線
この記事を書いた人
こーし(@mimikousi)
ポンプの性能曲線の見方
上図は、一般的なポンプである「渦巻ポンプ」の性能曲線です。
横軸に、吐出し量を、縦軸に全揚程、NPSHr(NPSH3)、軸動力、効率をとります。
【横軸】
- 吐出し量[m3/min]
【縦軸】
- 全揚程 [m]
- NPSHr(NPSH3) [m]
- 軸動力 [kW]
- 効率 [%]
「全揚程」「NPSHr(NPSH3)」については、下リンクで詳しく解説しています。
-
参考【わかりやすく解説】ポンプの全揚程の計算方法
続きを見る
-
参考【解説】ポンプのキャビテーション対策(NPSHとは?)
続きを見る
運転点とは
ポンプの運転点とは、今まさにポンプが運転している条件を示しています。
上図の性能曲線に示した運転点は、下記のように読み取ることができます。
- 吐出し量 7 m3/min
- 全揚程 26 m
- NPSHr(NPSH3) 3.5 m
- 軸動力 36.5 kW
- 効率 75 %
定格点とは
ポンプの定格点とは、ポンプ設計時の要求仕様(能力)を示しています。
上図の性能曲線に示した定格点は下記の通りです。
- 吐出し量 7 m3/min
- 全揚程 21 m
通常、定格点の全揚程よりも運転点の全揚程の方が20%程度大きくなるように設計されます。
次は、運転点の求め方について解説していくよ。
抵抗曲線とは
上図にポンプの全揚程と抵抗曲線を示しました。
抵抗曲線とは、下記(1)式から求まる全揚程を吐出し量毎に示した曲線です。
抵抗曲線とポンプの全揚程(HQカーブ)が交わる点が「運転点」となります。
全揚程の式(抵抗曲線の式)
\(u\) : 流体の速度 [m/s]
\(\rho\): 流体の密度 [kg/m³] ※非圧縮性流体とする(例:水)
\(g\) : 重力加速度 [m/s²]
\(h\) : 高さ [m]
\(p\) : 圧力 [Pa]
\(H\) : 全揚程 [m]
\(\Sigma F\) : 損失ヘッド [m]
\(\Sigma F = \frac {\Sigma \Delta P}{\rho g}\)
\(\Sigma\Delta P\) : 圧力損失の総和 [Pa]
\(\Delta P_{p}\) : 配管圧力損失 [Pa]
\(\Delta P_{v}\) : バルブ圧力損失 [Pa]
\(\Sigma\Delta P = \Delta P_{p} +\Delta P_{v}\)
添字1 : ポンプの吸込側
添字2 : ポンプの吐出側
(1)式の各項は、下記のように呼ばれています。
位置ヘッド差については、一般に「実揚程」とも呼ばれています。
$$\textbf{速度ヘッド差}\ \ \ \frac {u^{2}_{2}-u^{2}_{1}}{2g}$$$$\textbf{位置ヘッド差}\ \ \ {h_{2}-h_{1}}$$$$\textbf{圧力ヘッド差}\ \ \ \frac {p_{2}-p_{1}}{\rho g}$$$$\textbf{損失ヘッド}\ \ \ \Sigma F$$
(1)式の各項のうち、位置ヘッド差(実揚程)や圧力ヘッド差は吐出し量が変化しても一定ですが、速度ヘッド差や損失ヘッドは吐出し量が大きくなると、どんどん大きくなっていきます。
つまり、抵抗曲線はプロセス条件から求めることができ、吐出し量によって変化します。
抵抗曲線の求め方
前提条件
供給液の密度 \(\rho = 1,000\) kg/m³
重力加速度 \(g =9.81\) m/s²
供給タンク圧力 \(p_{1} = 50\) kPaG
送液タンク圧力 \(p_{2} = 111\) kPaG
吸込揚程 \(h_{1} = 3.0\) m
吐出揚程 \(h_{2} = 15.0\) m
供給タンク内径 \(D_{1} = 2.0\) m
配管内径 \(D_{2} = 0.2\) m
上図に示すようなプロセスを考えてみます。
プロセス条件から求める全揚程、すなわち抵抗曲線を(1)式を用いて算出し、下表のようにまとめました。
位置ヘッド差(実揚程)や圧力ヘッド差は一定ですが、速度ヘッド差や損失ヘッドは吐出し量が増加するにつれて、どんどん大きくなっていることがわかります。
吐出し量Q [m3/min] |
速度ヘッド差 [m] |
位置ヘッド差 [m] |
圧力ヘッド差 [m] |
損失ヘッド [m] |
全揚程 (抵抗曲線) [m] |
0 | 0 | 12.0 | 6.2 | 0 | 18.2 |
1 | 0.01 | 12.0 | 6.2 | 0.14 | 18.4 |
2 | 0.06 | 12.0 | 6.2 | 0.57 | 18.9 |
3 | 0.13 | 12.0 | 6.2 | 1.29 | 19.6 |
4 | 0.23 | 12.0 | 6.2 | 2.30 | 20.7 |
5 | 0.36 | 12.0 | 6.2 | 3.59 | 22.2 |
6 | 0.52 | 12.0 | 6.2 | 5.17 | 23.9 |
7 | 0.70 | 12.0 | 6.2 | 7.04 | 26.0 |
8 | 0.92 | 12.0 | 6.2 | 9.20 | 28.3 |
損失ヘッドの算出方法については、下記リンクを参考にしてください。
-
【解説】配管圧力損失の計算方法
-
【解説】コントロールバルブの圧力損失(Cv値)計算
流量調整時の抵抗曲線
吐出し流量を調整したい場合は、コントロールバルブ(CV)の開度を調整します。
CV開度を絞ると、抵抗曲線の傾きが大きくなり、より低流量でポンプの全揚程(HQカーブ)と交わるようになり、運転点が左にシフトします。
図からもわかるように、CV開度を調整しても位置ヘッド差(実揚程)や圧力ヘッド差は一定であり、バルブによる損失ヘッドが大きくなります。
CV開度で抵抗曲線の傾きを変化させ、ポンプの吐出し量を調整しているのですね!
まとめ
ポイント
- 運転点とは、今まさにポンプが運転している条件のこと
- 定格点とは、ポンプ設計時の要求仕様(能力)のこと
- 抵抗曲線とは、プロセス条件から求めた全揚程を吐出し量毎に示した曲線のこと
- 運転点は、抵抗曲線とポンプの全揚程(HQカーブ)の交わる点となる
- ポンプの吐出し量は、コントロールバルブ(CV)の開度で調整する