どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。
本日は、「デジタル化で疲弊する日本」についてわかりやすく解説します。
先日、日本のデジタル赤字が▲5.5兆円になったというニュースを見ました。
また、「デジタル小作人」というワードも話題になっており、どのくらい深刻な問題なのか調べてみたところ、興味深い事実が判明しました。
今まさにDXに取り組んでいる方、デジタル赤字について学んでみたい方は、ぜひ読んでみてください!
本記事の内容
・結論
・対策案
・デジタル赤字の現状
・経常収支(日本、ドイツ、アメリカ)
結論
はじめに結論をまとめました。ここだけでも読んでいってください!
結論
- 日本の「デジタル赤字」は年々拡大しており、2023年は世界1位の▲5.5兆円
- DXに取り組めば取り組むほど、日本のお金が海外(主に米国)
に流出している - 製造業はデジタル投資の割に付加価値が上がっておらず3年連続貿易赤字
- 類似の産業構造をもつドイツに比べると、製造業の付加価値が小さい
- このままでは日本は米国に搾取され続ける「デジタル小作人」となってしまう
一方で、「デジタル小作人」論を否定する日経ビジネスの記事がありました。
この記事の要点は下記の通りです(無料部分のみ)
ポイント
- デジタル小作人論は、卑屈かつ負け犬根性丸出しの論にしか思えない
⇒そうかもしれないが危機ではあると思う。 - デジタル小作人論をメディアにささやく官僚や政治家は何を狙っているのか
⇒たしかに、そういう視点も大事だと思う。 - 日米安全保障条約によって結ばれた同盟国(米国)の企業がデジタル地主である
⇒米国であろうが他国に依存するのは良くないと思う。もしや米国の手先? - ITの領域で「補助金を付けて企業を育成」することほどくだらない試みはない
⇒まあ同意。 - デジタル地主やその候補者のデータセンターを多数、日本国内に誘致する
⇒解決策の一つ - 寡占企業を利用して彼らを超える存在に、と考えよ
⇒解決策の一つだが、果たして見込みあるのか?
確かに、歴史で学んだような「小作人」に比べれば、「デジタル小作人」は無限の価値創造の可能性を秘めており、デジタル地主を利用して大きく稼ぐこともできると思います。
ただ、同盟国(米国)であろうと他国に首根っこを捕まれている状態は良くないです。
決定的な解決策は見えてこないし、現に「デジタル赤字+貿易赤字」であり、デジタル地主を利用して大きく稼げてないことは明白です。
現状、日本は「危機的な状況」であることは間違いないと思います。
対策案
では、どうしたらよいのでしょうか。
デジタル小作人化に対する対策案は下記の通りです。
対策案
- データセンターを日本国内に誘致
- デジタル地主を利用して稼ぐ
- 付加価値を上げる(製造業DX)
- インバウンド(観光業)で外貨を稼ぐ
- 貿易赤字対策(食料自給率を上げる、海外原料依存からの脱却)
「デジタル赤字+貿易赤字」により、今後は継続して円安に進んでいく可能性が高いです。
(何かをキッカケにドルが暴落する未来もあり得ますが。。)
すると、輸入に頼っている「食料」の値段が上がっていき、国内農業の競争力が上がってくるかもしれません。
また、日本酒や国産ワイン、ウイスキー、バターなど輸出で大きく稼げるポテンシャルもあります。
よって、今後は「グローカル×デジタル×農業」に注目が集まってくるかもしれません。
(詳細はもう少し調べてみたいと思います)
化学メーカーは円安に弱いと言われており、業績回復のための一手を模索しています。
利益率が高いからといって、リスクの高い医薬品や農薬で人間や大地を汚すよりも、一次産業(農業、林業、水産業)に挑戦し、地球環境保全に取り組むのはアリではないでしょうか。
とはいえ、明確な解決策は簡単には見つからないと思うので、みんなで「問題意識」を持って解決に向けて取り組みましょう。
ちなみに、ダイセルは「Sustainable Process」というビジョンを示しています。
具体的にどういうビジネスにしていくのか、注視していきたいと思います。
化学メーカーを「持続可能」にするには、これしかないと思う。
今は有限の石油由来原料を使い、排水・排ガス、農薬、化学肥料、製品の廃棄物等により、むしろ一次産業を破壊している。
事業が拡大すればするほど、一次産業(農業、林業、水産業)や自然が元気になる仕組みを作らないといけないな。 pic.twitter.com/4yx9xzR0nE— こーし⚡️ケミカルエンジニア (@mimikousi) June 14, 2024
それでは、個々のデータを見ていきます。
デジタル赤字の現状
デジタル赤字拡大は悪いことなのか?(三菱総合研究所HPから引用)
日本のデジタル赤字は年々拡大しており、2023年には▲5.5兆円にも達しています。
DXに向けた取り組みはまだまだ続いていくので、デジタル赤字は今後も拡大していくでしょう。
世界のデジタル収支
世界のデジタル収支を抜粋すると下記の通りです。
世界のデジタル収支
- 米国1,114億ドル
- 英国692億ドル
- フランス▲24億ドル
- オランダ▲48億ドル
- ドイツ▲102億ドル
- 日本▲364億ドル(▲5.5兆円)
【参考】OECⅮで最大のデジタル赤字国・日本、欧米の背中遠く
米国、英国がデジタルで稼いでいます。
一方、日本とドイツがデジタル分野で大きな赤字を出しています。
第2次世界大戦の戦勝国と敗戦国で分かれているのが、興味深いですね。
経常収支の視点
経常収支の構造変化から考える日本円の需給(三井住友DSアセットマネジメント)
経常収支の視点で見れば、「デジタル赤字」に加え「貿易赤字」も
経常収支全体では黒字ですが、「サービス収支(デジタル収支含む)」、「貿易収支」、「第二次所得収支」が赤字で、「第一次所得収支」のみが黒字です。
「第一次所得収支」は、対外金融債権・債務から生じる利子や配当金などであり、これらは海外で再投資されるケースが多く、円高要因になりにくいと言われています。
よって、「サービス収支(デジタル収支含む)」と「貿易収支」の赤字が継続すると、今後も円安方向に進んでいくと考えられます。
サービス収支
日本の「デジタル赤字」はクラウド支出など8年間で倍増以上。外国人観光客からいくら稼いでも…
デジタル収支は、サービス収支の中の「その他サービス」に含まれています。
「その他サービス」の赤字幅は年々拡大していることがわかります。
サービス収支全体では、インバウンド(観光業)で挽回はしているものの赤字がずっと続いています。
貿易収支
貿易収支も3年連続赤字であり、貿易で稼げていないのも問題です。
上図の輸出入額(2021年)を見てみましょう。
鉱物性燃料(原油、LNG、石炭など)の輸入額が最も大きく16兆円にもなります。
一方、自動車の輸出額は10兆円超であり、鉱物性燃料の輸入額に負けています。
化学製品は輸入額と輸出額がトントンです。
また、半導体や科学光学機器で約4兆円の黒字ですが、原料別製品(鉄鋼)は4兆円の赤字であり、輸出で大きく勝てる分野がありません。
つまり、デジタル投資が増えているにも関わらず、「製造業が付加価値を上げることができていない」と言えます。
現状、 鉱物性燃料(原油、LNG、石炭など)の輸入額分をなんとか稼いでいるだけであり、食料品の輸入額がそのまま貿易赤字になっているようです。
よって、貿易赤字を解消するためには、製造業の付加価値を上げる(製造業DXなど)、もしくは食料品の自給率を上げる必要があります。
ドイツの場合
そういえば、最近ドイツに名目GDPで抜かれてしまいました。
ドイツは2000年代に実施した労働市場改革が生産性を向上させ、ドイツ企業の競争力を高めているそうです。
【参考】伸び悩むニッポン? なぜGDPでドイツに抜かれたのか
日本とドイツの経常収支を比べてみると、日本は所得収支で稼いでいるのに対し、ドイツは貿易収支でがっつり稼いでいることがわかります。
ドイツも日本と同じように鉱物性燃料を10兆円以上輸入していますが、機械(自動車など)や化学製品で35兆円以上輸出できており、付加価値を生み出せていると言えます。
また、ドイツは食料自給率も80%超と高いため、食料品の輸入が超過していることもありません。
【おまけ】アメリカの場合
米国の経常収支を見てみましょう。なんかヤバいです。
GDP(約25兆ドル)の▲4%ということは、毎年▲1兆ドルの赤字ということです。
特に貿易赤字がすさまじく、経常赤字の主因になっています。
米国の貿易赤字の上に、世界の経済成長は成り立っているのかもしれません。
ドルの価値がいつまで続くか不安になってきますね。。
まとめ
今回、デジタル赤字について深掘りして調べてみました。
芋づる式に気になることが出てきて、まだまだ調べたいことはありますが、ひとまず記事にまとめてみました。
多くの日本企業がデジタル投資で固定費削減(自動化)に取り組んでいますが、それだけでは全然足りません。
本気でDXを起こして付加価値を上げていかないと、どんどん日本は貧しくなってしまいます。
本記事を読んで、「問題意識」や「危機感」を持っていただけたら嬉しいです。