どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。
本日は、「現代数理統計学(竹村著)」と「現代数理統計学の基礎(久保川著)」を比較して感じた特徴をお伝えします。
上記2冊は、統計検定1級の参考書としてよく知られていますが、どちらがより統計検定1級向けなのか検証してみました。
これから統計検定1級の受験を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
本記事の内容
・目次の比較
・特徴
この記事を書いた人
こーし(@mimikousi)
まとめ(結論)
結論、統計検定1級(統計数理)向けなのは、「現代数理統計学の基礎(以下、久保川本)」です。
理由は、統計検定1級で頻出の確率分布の解説が詳しく、演習問題とその解説が豊富だからです。
また、デルタ法やスターリングの公式など、過去問で出てくる内容を幅広くカバーしていました。
その他、「定義、命題、補題、例」のように、整理して記載されているため、復習しやすかったのも良かったです。
ただし、統計検定1級の出題範囲である「ノンパラメトリック法」については、他書で補う必要があります。
統計検定1級の公式テキストや久保川先生の新刊がオススメです。
統計検定1級対応 統計学(公式テキスト)
データ解析のための数理統計入門(久保川著)
一方、「現代数理統計学(以下、竹村本)」の良いところは、下記3点です。
- 言葉での説明が多くてわかりやすい
- 特に、順序統計量や十分統計量の解説がわかりやすい
- ノンパラメトリック法、ベイズ法の解説がある
竹村本でも十分に統計検定1級に合格できる実力はつくと思います。
ただ、久保川本が難しいから竹村本に挑戦するというのはオススメしません。
難易度がほとんど同じか、むしろ竹村本の方が難しいので、どちらか1冊で十分でしょう!
以下、2冊を詳細に比較してみます。
目次の比較(統計検定1級出題範囲)
まず、目次の比較をしてみましょう。
統計検定1級出題範囲 (統計数理) |
現代数理統計学 (竹村著) |
現代数理統計学の基礎 (久保川著) |
||
確率と確率変数 | 第1章 前置きと準備 | P.1〜 | 第1章 確率 | P.1〜 |
種々の確率分布 | 第2章 確率と1次元の確率変数 | P.6〜 | 第2章 確率分布と期待値 | P.11〜 |
統計的推測(推定) | 第3章 多次元の確率変数 | P.36〜 | 第3章 代表的な確率分布 | P.29〜 |
統計的推測(検定) | 第4章 統計量と標本分布 | P.63〜 | 第4章 多次元確率変数の分布 | P.55〜 |
分散分析 | 第5章 統計的決定理論の枠組み | P.91〜 | 第5章 標本分布とその近似 | P.84〜 |
回帰分析 | 第6章 十分統計量 | P.105〜 | 第6章 統計的推定 | P.115〜 |
分割表の解析 | 第7章 推定論 | P.123〜 | 第7章 統計的仮説検定 | P.144〜 |
ノンパラメトリック法 | 第8章 検定論 | P.159〜 | 第8章 統計的区間推定 | P.168〜 |
不完全データ | 第9章 区間推定 | P.198〜 | 第9章 線形回帰モデル | P.178〜 |
シミュレーション | 第10章 正規分布、2項分布に関する推測 | P.215〜 | 第10章 リスク最適性の理論 | P.211〜 |
ベイズ法 | 第11章 線形モデル | P.237〜 | 第11章 計算統計学の方法 | P.245〜 |
第12章 ノンパラメトリック | P.271〜 | 第12章 発展的トピック:確率過程 | P.266〜 | |
第13章 漸近理論 | P.293〜 | |||
第14章 ベイズ法 | P.312〜 |
目次だけ見ても、よくわかりませんね。。
実際に読んでみて、体感した特徴を下記にまとめました。
特徴
それぞれの特徴は下記の通りです。
1.久保川本の方が、確率分布の内容が豊富
竹村本は「統計的推測(推定)」の内容に入るのが、第5章統計的決定理論の枠組み(P.91〜)に対し、久保川本は第6章統計的推定(P.115〜)となっており、久保川本の方が「確率と確率変数」「種々の確率分布」などの基礎的な内容が多いです。
また、確率分布の内容にいたっては、竹村本は約10ページ分しかありませんが、久保川本は、約20ページ分あります。
確率分布は、統計検定1級で頻出の内容であるため、久保川本に軍配が上がります。
2.竹村本は、統計的決定理論が前面に出ている
竹村本では、第5章で統計的決定理論に触れていますが、久保川本では「第10章 リスク最適性の理論」でやっと触れています。
統計的決定理論は、統計検定1級ではあまり出題されないので、過去問解きながら竹村本を読むと「ズレている」感があります。
3.竹村本は、「ノンパラメトリック法」「ベイズ法」をカバー
ベイズ法は頻出なので、解説が詳しいのはありがたいです。
久保川本は、目次に「ベイズ法」の記載がありませんが、「第6章 統計的推定」「第7章 統計的仮説検定」「第8章 統計的区間推定」「第10章 リスク最適性の理論」に分散して解説されています。
4.久保川本は、「シミュレーション」「確率過程(統計応用)」をカバー
実務でもよく使いますし、統計検定1級でも頻出なので、この内容はありがたいでしょう。
ただ、他の内容に比べて格段に難易度が上がりますので、余裕がなければ飛ばすのもアリです。
総括すると、
竹村本は、確率分布などの基礎的な内容が少なく、統計的決定理論が前面に出ているため、統計検定1級と少しズレている感じがしました。
一方、久保川本は難易度がぐっとあがる「第9章 線形回帰モデル」までは比較的簡単です。
第9章以降の内容も統計検定1級に出題されますが、第1章〜第8章に集中すれば、十分合格できる実力がつくため、久保川本の方が効率良く統計検定1級対策ができると言えます。
✅数理統計学の教科書読み比べ
下記2冊のわかりやすさを比較すると、
①久保川本>竹村本
・確率分布(全般)
・混合分布
・たたみ込み
②久保川本<竹村本
・順序統計量
・カイ二乗分布
・十分統計量
今のところ統計検定1級向けなのは、久保川本こと「現代数理統計学の基礎」かもしれない。 pic.twitter.com/Home4fkECV— こーし⚡️ケミカルエンジニア (@mimikousi) October 13, 2023