就職したらどんな就職先、仕事が待っているのかな?
こんなお悩みを解決します。
どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。
本日より、化学工学入門講座を始めていきたいと思います。
第1回目は、「化学工学とは?」についてです。
わかりやすく解説しますので、気軽に読んでいってください!
この記事を書いた人
こーし(@mimikousi)
化学工学とは?
化学工学とは、誤解を恐れず簡潔に書くと、
「化学物質をどのようにして大量に生産するか。」について学ぶ学問です。
実験室(ラボ)で作り出した化学物質を工場規模で大量生産するためのノウハウを体系的に整理した学問とも言えます。
ラボ装置から生産機へ(スケールアップ)
ラボ実験にて、上図のような反応を行い、運良く高機能な化学物質を作り出すことができ、その化学物質を実際に製品として売り出すために、量産化を検討しているとします。
ここで、ラボ装置は、下図のようなものとします。
※わかりやすくするために簡潔にしています。実際のものとは異なるのでご注意ください
(ラボ装置は詳しくないので、適当です汗)
原料Aと原料Bを反応器で反応させ、反応熱を氷水で冷やすとともに、気相はN2で置換します。
N2に同伴した蒸気成分は、冷却器で凝縮させ回収します。
そして、反応が終わったら、反応器にある製品P(固体)と副生物Q(液体)を沪過して分離します。
沪紙上には製品Pの結晶が残り、沪液側の副生物Qは、冷却器にたまった液体と共に廃液処理業者に処理してもらいます。
それでは、上図のラボ装置の大型化を考えてみましょう。
例えば、生産機にマグネチックスターラーは使えませんので、攪拌機を使用します。
攪拌機を設計するためには、ラボ反応器内の流動状態を把握し、それを大型反応器で再現できなければなりません。
そのため、撹拌レイノルズ数などの無次元数を計算し、撹拌翼の形状や大きさ、そして回転数を設計します。
【参考】攪拌機のラボから生産機へのスケールアップ(動画) 出典:名古屋工業大学
ラボの反応器は氷水で冷やしていましたが、生産機で氷を使っていたら手間がかかって仕方がないです。(費用も半端ない??)
よって、どれだけ冷却する必要があるのか、目標温度、必要除熱量を計算し、目的にあう冷媒(チルド水や冷却水など)を用意する必要があります。
冷媒を用意するだけではまだ不十分で、反応器の内液を冷やすための熱交換器も設計する必要があります。
また、長期間生産を続けると、材質によっては腐食してしまうため、材質の選定も重要になってきます。
ラボでは適当に材質を決めていたチューブも、鉄、ステンレス(SUS)、銅、ハステロイなど、取り扱う化学物質、運転条件に合わせてちゃんと検討する必要があります。
それ以外についても考慮すべきことは本当にたくさんありますが、全部を解説したらキリがありませんで、ざっくり下表にまとめてみました。
ラボ装置 | 生産機 (大型装置) |
単位操作 | 検討事項 |
マグネチックスターラー | 撹拌機 | 撹拌 | 撹拌機の形状 回転数など |
ガラス反応器 | 反応器 | 反応工学 | 反応速度 滞留時間 材質など |
氷水 | 冷凍機 | 伝熱 | チルド水の温度、流量 交換熱量など |
N2ボンベ | N2タンク | ー | 使用量 タンク容量 必要圧力など |
チューブ | 配管 | 流動 | 配管材質 配管径 配管長さ 圧力損失など |
冷却管 | スクラバー | ガス吸収 | 気液平衡 必要理論段数など |
沪紙 | 沪過装置 | 沪過 固液分離 |
沪過速度 膜閉塞 必要面積など |
自然乾燥 | 乾燥機 | 乾燥 | 乾燥方式 熱源温度 熱媒流量 伝熱面積など |
廃液処理 | 蒸留塔 | 蒸留 | 必要理論段数 塔径など |
手動操作 | 自動制御 | 制御工学 | 制御構成 必要計器 PID制御 シーケンスなど |
上表のように、ラボ装置では考えないようなことも、生産機では細かく考える必要があります。
生産機は規模が大きいので、ちょっとした計算ミスで原料が反応器までたどり着かなかったり、温度が下がらず反応暴走してしまう可能性があります。
そうならないために、化学工学では一つ一つの操作(単位操作)について知見を深め、体系的に整理しています。
✅ケミカルエンジニアのお仕事
化学品を大型装置で大量生産するときに、
ラボでは問題にならないようなパラメータを細かく設定するお仕事
• 攪拌翼のサイズ、回転数
• 反応器の滞留時間(反応速度)
• ユーティリティー(冷却水、スチーム)の流量、温度
• 圧力損失
• 制御構成
などなど— こーし⚡️ケミカルエンジニア (@mimikousi) October 3, 2020
単位操作とは?
化学工学という学問がなかった時代は、製造する製品毎に職人さんが経験と勘で製造していましたが、経験と勘では限界がありました。
そこで、それぞれの製造プロセスに共通する操作を「単位操作」として分類し、整理することで、製造プロセスを「単位操作の体系(まとまったもの)」と見なすことに成功しました。
よって、今では化学工学の「単位操作」を学ぶことで、石油精製プラントや高機能化学品プラント、医薬品プラント、飲料プラントなど様々な製造プロセスを効率的に設計することができるようになりました。
まとめ
化学工学とは、「化学物質をどのようにして大量に生産するか。」について学ぶ学問です。
ラボ装置から生産機を設計する際に、必要となるノウハウを学ぶことができます。
あらゆる製造プロセスで必要となる撹拌や伝熱、蒸留などの「単位操作」を体系的に学ぶことができるため、多種多様なプロセスを設計できるようになります。
次回の化学工学入門講座②は、コチラです。
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化学工学入門②〜化学工学系のお仕事【就職に強いは本当?】
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