また、就職したらどんな仕事が待っているのかな?
こんなお悩みを解決します。
どうも。こんにちは。
ケミカルエンジニアのこーしです。
化学工学入門講座第2回目は、「化学工学系のお仕事」についてです。
化学工学を専攻した学生の就職先についても解説します!
わかりやすく解説しますので、気軽に読んでいってください!
この記事を書いた人
こーし(@mimikousi)
化学工学講座第1回「化学工学とは?」はコチラ
-
化学工学入門①〜化学工学とは?【現役ケミカルエンジニアが解説】
続きを見る
目次
化学工学系の就職先
化学工学を専攻すると、製造プロセスを構成する「単位操作(反応工学や伝熱、蒸留、制御など)」を体系的に学ぶため、化学品、医薬品、石油精製、発電などあらゆる「製造プロセス」の開発に携わることができます。
よって、化学工学専攻の学生は非常に幅広い業界で採用されています。
化工系の就職先一覧
- 化学メーカー
- エンジニアリングメーカー
- 石油メーカー
- 医薬メーカー
- 重工メーカー
- 電力会社
- 食品・飲料メーカー
- 素材メーカー(ガラス、繊維、鉄、非鉄など)
- 自動車(部品)メーカー
あげるとキリがありませんが、とにかく幅広い業界に就職することができます。
いろんな業界で必要とされる割には、化学工学系の学生は少ないため、化学系(特にバイオ関係)の学生に比べて就職が有利だと言われています。
事実、私が勤める化学メーカーの人事部も、化学工学系の採用は難しいと言っています。
化学工学系が活躍できる会社は?
化学工学系が花形となれる会社はなんと言っても「エンジニアリングメーカー」です。
エンジニアリングメーカーは、化学や医薬、石油メーカーなどから受注して、プラントの設計・調達・建設(EPCと言います)を行います。
受注件数が多ければ多いほど利益が増えますので、数多くの製造プロセスの設計に携わることができます。
一方、化学メーカーや医薬メーカーは、新製品を作るまでが大変で、一度製造プロセス(プラント)を建ててしまえば、生産を続けるだけで利益が出ます。
しかも、新製品の特徴をふまえた基本設計(要求仕様の定義)をするだけで、詳細設計はエンジニアリングメーカーに外注するケースも多々あります。
よって、エンジニアリングメーカーに比べて、製造プロセスの設計に携わる機会は少ないと言えるでしょう。
化学工学系のお仕事(化学メーカーの場合)
化学工学系のエンジニアを「ケミカルエンジニア」と呼びます。
私の名刺の英語表記も「Chemical Engineer」になっています。(余談ですが)
それでは、一般的なケミカルエンジニアの仕事内容を3つの部署に分けて紹介します。
部署の横に記載したパーセントは、大体の配属割合を示しています。(※会社の方針にもよります)
- 技術開発(技術部) 60%
- 生産技術(製造部) 20%
- 研究(研究所) 20%
技術開発
ケミカルエンジニアの大半が配属されるであろう「技術開発」の仕事内容について解説します。
技術開発の仕事は、ざっくり2種類に分類できます。
① 新製品の開発
② 既存製品のプロセス改善
新製品の開発では、研究がラボで開発した製品を量産化する検討をします。
新製品の開発を研究から引き継ぐわけですが、研究は高機能製品を作り出すことに注力しており、作り方まではこだわってないケースがほとんどです。
そこで、ケミカルエンジニアが研究とは異なる視点で、スケールアップ前の最終確認を行います。
検討課題
- より安全な作り方はないか(高温・高圧を避けたり、毒性のない試薬に変更できないかなど)
- より低コストな作り方はないか
- 収率を左右する因子は把握できているか
- リサイクルの影響は確認したか(濃縮による影響など)
- 気液平衡や引火点、腐食性などの物性データは取れているか
これらの課題を解決した後、技術開発(技術部)は「ベンチプラント」というミニスケールのプラントを設計します。
なぜ、ベンチプラントを建てるのかというと、いきなり大きなプラントを建てて、そこで悪いデータが出てプロジェクトがダメになると、損失が大きくなってしまうからです。
ベンチプラントにて、スケールアップ時のデータ収集を行いつつ、試作品のプレマーケティング(顧客評価、需要予測)を行います。
この段階で、生産規模を決め、製造コスト、投資採算性を判断しないといけません。
生産規模が大きくなる場合、ベンチプラントより大きく、生産機よりも小さい「パイロットプラント」を設計する場合もあります。
ベンチプラントだけにするか、パイロットプラントだけにするか、はたまた両方建ててしまうかは、ケースバイケースで、会社の方針によります。
最後に生産機を建設し、試運転を行い(基本、技術部が担当する)、運転条件を定めた後、運転員(オペレーター)に教育を行って、晴れて製造課に引き渡しとなります。
設計も大変ですが、試運転、運転条件の設定、製造課への引き継ぎは、設計の何倍も大変です。
一方、既存製品のプロセス改善は、既存製品の製造プロセスを(主に)コストダウン目的で新しい製法に変える検討です。
既存プロセスの「現状把握」を徹底的に行い、メリット・デメリットを抽出し、どのように改善すべきかを考えます。(解決すべき課題が明確な場合が多い。あとはどうやるか手段を考えるだけ。)
コストダウンが主な目的ですが、コストダウンできるからと言って、プロセスが複雑になって運転が難しくなったりすると、トラブルによる停機を招いたり、非効率な運転をしてしまい、狙ったコストダウンができなくなる可能性があります。
よって、運転方法までを考慮した、プロセスの開発が必要となります。(新製品のプロセス開発でも同様ですね)
生産技術
生産技術は、製造課に駐在または所属する技術担当(運転員とは別)で、生産機の改善や管理を通して、いかに楽して安く作れるかを追求します。
常にモノ(製品)を作り続けているので、仕事が成果になるまでの時間が短いのが特徴です。
少し製造条件を見直すだけで、すぐにコストも変わるし、品質も変わります。
結果がすぐに”見える”ので、いち早く社会に貢献したいと考えている人に生産技術職は向いているのかもしれません。
一方、生産技術は設備的なトラブルや操作ミスによるトラブルなど、自分ではコントロールできないものに煩わされることが多いです。
ここが本当に大きな大きなデメリットです。トラブルを経験することで、成長できるのは間違いないのですが。。。(ピンチはチャンス)
生産技術の主な仕事は、下記の通りです。
生産技術の仕事
- 原価管理
- 品質管理(QC:Quality Control)
- 原価分析・コストダウン
- 工程安定化
- 原料調達の最適化
- トラブル対応
コストダウンをするためには、原価分析(現状把握)が非常に大事になります。
(言うまでもありませんが、原価分析をするために、日頃の原価管理が大切です。)
また、どこを改善するにしても基本的にトレードオフの関係になります。(どこかを良くすると、どこかが悪くなる)
よって、先人達により改善し尽くされた製造プロセスでは、トレードオフの関係に縛られ、何も手出しできないのが普通です。
もし成果を出したいのであれば、2手、3手先を見据えて検討するのがコツです。
例えば、こんなプロセスを考えます。
- 反応温度を下げると、コストは下がるが、品質が悪くなる
- 溶媒量を減らすと、分離コストは下がるが、品質が悪くなる
- 生産量(生産レート)をあげると、コストは下がるが、品質が悪くなる
- 触媒量をへらすと、コストは下がるが、品質が悪くなる
何かを変えると、必ずトレードオフの関係になりますので、いったんすべてを片方に寄せます。
ここでは仮に、品質を悪化方向に寄せたとしますと、あとは品質を改善する方法だけに注力すれば良くなります。
トレードオフの関係を何に寄せればブレイクスルーできそうか、この見極めが肝心です。
(最終的には、顧客評価をパスできるかどうかが最大の関門なのですが。。)
忘れてはいけないのが、原料調達の最適化です。
コストダウンに大きな影響力をもつのは、なんと言っても「原料価格」です。
できるだけ安い原料を仕入れることでコストを下げることができます。
しかし、安い原料は概して品質が良くないので、使いこなせるようにするのが生産技術の仕事です。
また、供給の安定性も考えなくてはいけません。
地震や火災などで調達先の工場が止まってしまう可能性もありますので、1社購買はリスクが大きいのです。
原料の調達先を複数確保しておくことで、供給の安定性を確保します。
最後に、品質管理(QC)も超重要です。品質管理には、最近注目のデータ解析が必須です。
統計学、プログラミング(Python、R)、制御工学をガンガン使いたい人には生産技術がおすすめです!
研究
研究職は経験したことがないので、詳しく書けませんが、研究は学生時代にみなさん体験しているので、イメージしやすいと思います。
しかし、友人の話を聞いていると、研究に配属されると化学工学を使う機会はそこまで無いようです。
もちろん、化学工学的な視点があるとより良いです。
以前、研究職の人と、HPLC(液クロ)の分析結果について議論していました。
液クロには、ポンプやチューブ、カラムがついており、ポンプ圧力や圧力損失、吸着が話題に上がりました。
これは、完全に「化学工学」の分野ですね。
また、ラボ反応装置における反応速度や物質収支、熱収支も化学工学的な考え方ができますし、化学工学的な視点があるのは強みになりそうです!
部署異動(ローテーション)について
大半の企業が、人材育成のための部署異動(ジョブローテーション)を行っています。
会社によって異なりますが、概ね下図のようなローテーションになるはずです。
技術開発と生産技術は行ったり来たりしますが、研究と技術開発は一方通行である場合が多く、研究出身の方が、技術開発から研究に戻ることはあっても、元々技術開発の人が研究に異動することはほとんどないです。
これは、技術開発や生産技術の人材が少ないからではないかと考えています。
(つまり、就職活動では技術開発や生産技術を志望した方が有利??)
よって、入社時に研究を志望するのか、技術開発・生産技術を志望するのかによって、その後のキャリアに大きな影響を与えるかもしれません。
まとめ
まとめ
- 化学工学系は幅広い業界に就職できる。
- 化学系(特にバイオ系)に比べると就職が有利(需要に比べて供給が少ない)。
- 技術開発は、研究が開発した新製品を製造課に引き継ぐ橋渡し役。
- 生産技術は、製品をいかに楽して安く作れるかを追求する。
- 研究は、化学工学を使う機会が少ない。
- 技術開発と生産技術の間の異動は多く見られるが、技術開発や生産技術から研究に行くことはめったに無い。
- 研究から技術開発に行くことはまれにある。(開発した製品を量産化まで面倒見る感じ。間違いなく出世コース)
本日は以上です。
次回は「ケミカルエンジニアに必要なスキル」についてです。
-
化学工学入門③〜ケミカルエンジニアに必要なスキルとは?
続きを見る